能代市の銭湯「巴湯」きょうで営業終了 137年の歴史に幕

きょう29日で営業を終了する能代市日吉町の銭湯「巴湯」
公衆浴場として明治時代から営業してきた能代市日吉町の銭湯「巴湯」が、29日の営業を最後に137年の歴史に幕を下ろす。お湯を沸かす燃料費の高騰や装置の老朽化などが理由。約20年間、1人で店を守ってきた店主の能登保子さん(88)は「私ももう年だし、ここが引き際と決断した。長年通ってくれたお客さんには感謝しかない」と話す。巴湯の閉店で、市内の銭湯は「明治湯」(明治町)の1軒だけとなる。
能代警察署から約70㍍北側の住宅街の一角にある巴湯は、能登さんの夫で4代目の清平さん(平成15年死去)の祖先が明治19年に創業。昭和24年の大火などにより過去「2、3回焼けたと聞いている」(能登さん)が、その都度建て直し、現在とほぼ同じ場所で営業し続けてきた。
能代が東洋一の木都と言われ、現在の市街地にも木材会社が多くあった昭和期には、仕事帰りの従業員やその家族で風呂場や脱衣所がごった返した。生活様式の変化や温泉施設の開業などから、その後は年々客足が減ったものの、近所の人たちを中心に住民が密接に触れ合える場として根強く愛されたほか、欧州の古城を思わせる独特でレトロな外観にもひかれて、全国から銭湯・温泉ファンが来訪するスポットとしても知られた。
風呂のお湯はかつて、木材会社から出る廃材などをくべて地下水を沸かしていた。清平さんが亡くなって以降は重油に切り替え、能登さんが経営から風呂場の清掃、湯沸かし、番台の仕事までを1人で担ってきたが、近年の燃料費高騰が経営を圧迫。入浴料は「お客さんへの感謝、サービス」として改定せず、悪天候などで来店者が見込めない時は休業するなどして店を維持してきたが、モーターなど装置の老朽化、自身の年齡や脚の状態のこともあり昨年12月、店を畳むことを決断した。
巴湯に通い続けた客からは、のれんを下げることに寂しさの声が聞かれる。バスを使って数年前から訪れている同市向能代の男性(68)は「ここに来れば知っている人に会える。お湯も熱めで、好きだった。閉店は残念だな」とぽつり。
同市上町の加賀幸子さん(86)は、御指南町に住んでいた30代の頃に10年ほど通い、引っ越した後しばらく遠のいていたが、2、3年前から再び週1回通うようになったという。「家にも風呂はあるが、冬は寒くて入れない。ここに来るといつもぽかぽかになれた。来月からどうしよう」と語る一方、「機械が壊れれば終わりと覚悟はしていた。よく頑張ってくれた」とねぎらった。
能登さんは「やめるのは申し訳ないけど、まさかこの年まで続けるとは思っていなかった。1人で20年、よくやったと思う」とし、「お客さんからは『長い間ありがとう』『お疲れさま』との言葉をたくさんもらっている。ただただ感謝しかない」と話した。
最終日29日の営業は正午から午後9時まで。入浴料は大人(12歳以上)350円、中人(6歳以上12歳未満)130円、小人(6歳未満)90円。
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