能代港の大型洋上風力発電所、国内初の商業運転開始

港湾区域で商用運転を開始した20基から成る「能代港洋上風力発電所」
能代市の能代港湾区域で22日、商業ベースで国内初となる大型洋上風力発電所の運転がスタートした。総合商社の丸紅(東京)が主導する特別目的会社「秋田洋上風力発電」(秋田市、AOW)が能代港に20基、秋田港に13基の洋上風車を建設するプロジェクトで、秋田港は来年1月に運転開始する見通し。平成27年度の開発調査から7年越しで商業運転にこぎ着けた。脱炭素社会を目指す国が再生可能エネルギーの切り札と位置付ける洋上風力の最先端を走る事業として注目され、各地から視察団が訪れている。
洋上風車は大型で安定的に発電できるのが特徴。海底に基礎を打ち込む「着床式」で大手風力発電機メーカーのベスタス(デンマーク)製を採用した。海面からブレード(羽根)の到達点まで約150㍍で40階建てビルに相当。羽根が描く円の直径は117㍍。出力は1基当たり4200㌗、合計14万㌗で一般家庭約13万世帯分に相当する。作った電力は、能代火力発電所そばの昇圧変電所から陸上ケーブルを経由して東北電力ネットワークの能代変電所、送電網に送られる。FIT法に基づき、1㌗時36円で同社に20年間にわたり全量売電する。
名称は「能代港洋上風力発電所」。能代火力発電所の裏手と北防波堤外海側の沖合1~3㌔に10基ずつ設置した。
事業を担うのは、丸紅、東北電力、秋田銀行、大林組、大森建設など13社が出資するAOW。能代港では環境影響評価の調査を経て2年2月に着工。翌月から3年9月までケーブルを敷設するなどの陸上工事を行った。昨年5~7月に海底に基礎杭(くい)(モノパイル)を打ち込み、その上に基礎杭とタワー本体をつなぐ接続部材「トランジションピース」を設置。タワー本体の据え付けは今年7~8月に実施。タワー、ナセル(発電機)、ブレードを黄色いトランジションピースの上部に据え付けた。
秋田港飯島埠頭(ふとう)でタワー、ナセル、ブレードを洋上風力専用のSEP船「ザラタン号」に積み込み、能代港を5往復して20基設置した。海上での迅速な設置と低コスト化を図るため、2分割されたタワーは飯島埠頭で事前に組み立てた。24時間態勢で工事を進め、1日1基のペースで完成させた。8月から試運転と法定検査を進めていた。
開発から運転開始に至る総事業費は1千億円。洋上風車の大型機器は国内ではほぼ製造できず、モノパイルはオランダ製、ブレードはドイツ製など海外から調達した。建設工事に伴う県内企業の受注額は100億円超にとどまった。
国内に先駆けたプロジェクトとして建設段階から関係者の熱い視線を集めてきた。能代市・三種町・男鹿市沖の一般海域では三菱商事(東京)を中心とする企業連合が8年3月着工、10年12月の運転開始を目指して計画を進めており、国内で四つしかない洋上風力の基地港湾に指定された能代港周辺はさらなる注目が予想される。
能代港で法定検査を終え、22日午前0時に営業運転を開始。風車の据え付けで秋田港に先行する能代港が先に稼働した。電力メーターを検針して東北電力ネットワークに報告し売電を始めた。試運転で風車はすでに回っていたため、見た目に変化はなく静かな滑り出しとなった。秋田港は最終データ確認などを行って来月に運転開始する予定。
丸紅の英ロンドン駐在員として英国・北海の洋上風力プロジェクトマネジャーも務めたAOWの岡垣啓司社長(51)は「本事業は今後の日本における洋上風力発電導入拡大の試金石と位置付けてきたが、無事商業運転開始を達成でき感慨深い。本事業が起爆剤となり、後世に日本の電源構成転換の出発点として語られる存在になりたい。本事業を通じ、秋田の洋上風力関連産業の発展、人材育成に最大限貢献していく」と話した。
来年3月に能代市で竣工式、秋田市で竣工記念レセプションを開催する。
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