紙のドレス 国際コンで優勝 帯広の現代アート作家加藤さん
現代アート作家の加藤かおりさん(帯広)が、豪州・タスマニアで開かれた国際的なペーパーアートのコンテスト「Paper on Skin 2022」で優勝した。ほぼ紙のみで作られた、赤色のドレスと青色のカラー(襟)が特徴的な加藤さんの作品は、日豪関係を意識したもので、「出品して本当に良かった。私の込めた思いが審査員に伝わってうれしい」と喜びをかみしめている。
優勝した加藤さんと作品
コンテストは、作品の80%が紙で作られた着用できる作品であることが条件。書類審査から始まり、6月2日の最終審査で11カ国40人34作品まで絞られた。日本人のファイナリストは加藤さんのみ。
作品名は「Bilateral Relations」。「二国間関係」を意味し、豪州と日本の交流を意識したもの。加藤さんは豪州に留学経験もあり、以前からなじみ深い国ではあったが、昨冬に両国の将来的な結びつきを深める「日豪若手対話」の代表団に選ばれたこともあり、自然と思いが膨らんでいった。
作品は高さ約140センチ、幅約100センチのドレス。豪州と日本の国旗の色を取り入れ、七稜星を想起させる星型をドレスの中心部と、髪飾りにあしらった。ほぼ100%紙で作られ、全紙(789ミリ×1092ミリ)約12枚を幾重にも折って立体にしている。
優勝は思ってもみない衝撃の出来事だったという。出品までの道のりが険しく、賞を考える余裕もないような日々を過ごしていた。
今年1月。エントリー後の審査は通ったものの、コロナ禍で豪州までの航空便が制限され、作品を5月下旬の期日までに送れない可能性が出てきた。コンテストを諦める最悪の事態も想定し、「制作も気持ちが乗らなかった」。国際郵便の最新情報を確認する日々が続いた。
梱包(こんぽう)を工夫するなど、あらゆる手を尽くして運送会社の条件を通過。状況を理解した現地事務所の全面的な協力で最終審査にこぎ着けたため、その時点で自身の中では満足だったという。
衣装の構築技術や紙の革新的な使い方、着用時に動いたときの形と機能など、さまざまな面から審査。そのうちの重要なポイントの一つだった作品のコンセプトが評価されたことに「日豪関係をテーマとした作品を評価してもらえたのは、すごく価値のあることだと思う」と話す。
優勝は18日の早朝に写真投稿アプリ「インスタグラム」にタグ付けされて知った。その後メールも届いて実感が湧いたが、その日は夢見心地だった。コンテスト辞退も想像していた加藤さんは、「周りの人に『いちかばちか送ってみてもいいんじゃない?』と励まされ、背中を押してもらってここまできた。私が選んだ道がいいものになるように導いてくれた人たちに感謝したい」と話している。
作品は23日から7月30日まで、タスマニアのデボンポートのギャラリーで展示されている。
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