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紀伊民報社

オリジナルのかんきつ実る 10年前に有志が受粉

酸味が料理人に好評というオリジナル品種のかんきつの実

 和歌山県田辺市上秋津の農家、原拓生さん(53)の畑で、かんきつの新品種をつくろうと、10年ほど前に有志が受粉作業をして種から育てた木が成長し、オリジナルの品種として実をつけた。「清見」と「安藤ミカン」を掛け合わせたものなどがある。新品種として正式な登録はしていないが、酸味など独特な味わいを気に入り、早速、料理に使ったシェフもいるという。

 アートを通じた地域活動をしている同市中屋敷町の廣本直子さん(46)らの団体が2012年と13年、多くの品種のかんきつを栽培する原さんや、県果樹試験場の協力を得て、都市部と地元の人が交流しながらかんきつ類を掛け合わせて、新品種をつくる取り組みをした。
 東京都内のIT企業社員や地元の人らが、掛け合わせる品種をいくつか選び、めしべに花粉をつけて、他の花粉が入らないように袋がけをした。その後、原さんが受粉してできた果実から種を取り、それを苗木にして育てた。
 接ぎ木はせずに、種からそのまま木に育てた「実生(みしょう)」栽培。途中で枯れた木もあったが、残った20本が大きくなり、樹高は約3メートルまで成長。早い木は一昨年から実をつけたが、今年初めて実をならせた木が多かった。
 原さんによると、清見と安藤ミカンを掛け合わせてできた実は、酸味や白ワタの部分の甘みを気に入った有名料理店のシェフがおり、実際に料理やデザートに使うなどし、「増やしてほしい」という要望もあるという。ほかにも、「ハッサク」と「カラマンダリン」、「清見」と「河内晩柑」の掛け合わせなどもある。これらオリジナル品種の収穫時季は1~4月ごろにかけてという。
 受粉時にアドバイスした、県果樹試験場の栽培部長、中地克之さん(51)は「農家ではない一般の人でも、このように新たな品種の育成は可能で、喜びにもなる。地域でこんな取り組みが増えると活性化にもなると思う」という。
 廣本さんは「ミカンのことや地域のことをより深く知ってもらおうと始めた取り組み。世話をしていただいた原さんのおかげでできたことだし、また、皆さんに田辺に来てもらえる企画をしたい」と語る。
 原さんは「特徴ある実ができて面白い。せっかく誕生した実なので、それぞれ使ってもらえる場所を見つけたい。また来年、新型コロナが落ち着いて可能な状況であれば、受粉作業に参加した人たちで試食会のようなこともしたい」と話している。

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