駐日トルコ大使が初来県 就任後初の公式訪問
約130年前にエルトゥールル号によって届けられた卓被を鑑賞するコルクット・ギュンゲン大使(右)ら=20日、和歌山市の県立博粒館で
トルコのコルクット・ギュンゲン駐日大使(53)が20日、就任後初の公式訪問で来県した。県立博物館(和歌山県和歌山市)で、約130年前に串本町の樫野崎沖で沈没したトルコ軍艦エルトゥールル号によって日本へ届けられた卓被(テーブルクロス)を鑑賞し「本当に心に響く『再会』」と感動。その後、県庁に仁坂吉伸知事を表敬訪問した。
ギュンゲン大使はイスタンブール出身で、アンカラ大学政治学部国際関係学科を卒業後、1989年にトルコの外務省に入省。これまで国連など国際機関に関わる部署や駐エクアドル大使などを歴任し、昨年3月から駐日大使を務めている。日本に赴任するのは初めてで、今回は就任のあいさつが目的という。
最初に訪れた県立博物館では、紀の国わかやま文化祭2021関連特別展「和歌山と皇室―宮内庁三の丸尚蔵館名品展―」が23日まで開かれており、大使らが竹中康彦主幹の案内で、エ号によって日本に届けられた「紫天鵞絨地花文刺繍卓被(むらさきびろうどじはなもんししゅうたくひ)」などを興味深く鑑賞した。
卓被は約2メートル四方の大きさ。皇室の紋章を意識したとみられる菊花紋を中央に据え、数種類の金糸とスパンコールによる宮廷刺しゅうで花唐草の文様を立体的に表現している。
県立博物館によると、1887(明治20)年の小松宮彰仁親王によるイスタンブール訪問の返礼として、オスマン帝国皇帝アブデュルハミト2世より特派公使オスマン・パシャ率いる親善使節団がエ号で派遣されて1890(明治23)年に来日し、明治天皇への親書や勲章などとともにこの作品も贈られたという。
エ号はこの年の9月に帰国の途に就いたが、串本町の紀伊大島樫野崎沖で台風による強風と波浪によって岩礁に激突して沈没。オスマン・パシャらを含む乗組員580余人が犠牲になったが、島民の懸命な救助活動で69人が助かり、明治天皇の命で海軍軍艦によって本国まで送り届けられた。このことが、日本とトルコの国際交流の礎となっている。
今回初めて卓被の実物を見ることができたというギュンゲン大使は「初めての公式訪問の機会に、わが国から贈られた素晴らしい作品を見ることができてうれしい。エ号の事故はわれわれの歴史にとっても、日本とトルコの友好関係にとっても非常に大事な出来事であり、それを後世に引き継ぐ作品。今日まできれいに保管してくださった宮家や宮内庁の方々、素晴らしい展示をしてくださった県立博物館の方に心から感謝したい」などと述べた。
串本町でエ号遭難の追悼が続けられていることなどについて「この出来事が日本とトルコの関係の礎になったことは紛れもない事実で、引き継がれていくことはとても大事。改めて、その時に手を差し伸べてくださった方々に感謝したい。わが国の歴史の一つのパーツは和歌山にある。トルコ国民にはぜひコロナ禍が収束した暁には日本を訪れ、必ず和歌山を訪問してほしい」と話していた。
■串本町長への訪問中止 コロナ禍の状況を考慮
今回の訪問では、21日の午前中に串本町サンゴ台の町役場で田嶋勝正町長を表敬訪問した後、午後から同町樫野にあるエ号の遭難慰霊碑での献花やトルコ記念館などの視察を公式行事として予定していたが、町長への表敬訪問については新型コロナウイルスの感染が拡大していることを考慮し、20日午後、町から急きょ中止が発表された。
田嶋町長は「大変残念だが、感染が急拡大している状況を考慮し、少しでもリスクを減らす意味などから判断させていただいた。改めてこちらからごあいさつに伺いたい」と話している。
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