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紀伊民報社

障害者が梅剪定枝集め 農家の作業を受託

梅畑で、農家(左)から説明を受け、剪定枝を集める作業をする障害者=和歌山県田辺市上秋津で

 和歌山県が新政策として本年度から2年間実施する農業と福祉の連携を推進する事業で、田辺市の社会福祉法人「やおき福祉会」が運営する障害福祉サービス事業所「やおき工房」(田辺市下三栖)が、同市上秋津の農家の作業を受託し、障害者が梅の剪定(せんてい)枝を集める作業を始めた。県は、障害者の就業機会の拡大や農業の労働力確保につながる取り組みとして、今後、農福連携が地域にも広がっていくことを期待している。

 国は農業と福祉分野の連携を進めており、県内でもすでに取り組んでいる所はあるが事例はまだまだ少ない。県はこれまでも、福祉事業所にアドバイザーを派遣したり、事業所で作った農産品を販売する機会を設けたりするなどの支援を行ってきた。
 今回は直接、県が仲介役となって、農業分野で障害者が働く場をつくり、農家と障害者の双方にとって取り組みやすい作業を見つけ、農家と障害者就労施設を結んだり、受け入れ態勢の整備に取り組んだりしている。
 取り組む農家には、障害者への農作業指導や受け入れ準備に必要な経費を支援する。地域で成功事例をつくり、その情報を発信することで農福連携を広げていきたい考えという。
 この事業では本年度、かつらぎ町で障害者によるジャバラの剪定枝の処理やタマネギの収穫が行われており、今回の田辺市の事例で3例目。やおき工房が上秋津の農家、中山皓靖さん(35)から剪定枝拾いの作業を受託し、利用者らが作業する。
 初日の26日は、やおき工房の職員1人と利用者3人が訪れた。梅畑には剪定した枝があちらこちらに散らばっており、中山さんから拾う範囲や集めて置く場所などの説明を受けた後、4人が作業に汗を流した。中山さんによると、約30アールの畑で11月20日までの間に作業を終えてもらう計画で、来年度も同時期に委託する予定。その後も継続していければと考えているという。
 中山さんは「一農家にできることは限られるが、少しでも役に立てられたらと考えた。いまの時季、梅の剪定とミカンの収穫や袋がけなどを並行してやっているので、剪定枝を集める作業をしてもらえると、他の作業をすることができ、助かる」と話している。
 やおき工房では農業分野の作業としては、これまでも毎年6月、田辺市三栖地域で梅の収穫作業をしている。所長の村上和也さん(48)は「コロナ禍でこれまでしていた仕事が減っている部分もある。内職作業だけでなく、外での作業で工賃を確保することも必要。地域で利用者が活躍できる場を提供してもらえることはありがたい。利用者が貢献できることが地域に浸透していってくれたら」と期待した。
 県では、今回の事業で福祉事業所と一緒に取り組みたいという農家を受け付けている。県障害福祉課は「農業者で福祉の心を持って受け入れる意欲のある人がいれば、事業を活用していただきたい」と話している。

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