神奈川大ハイブリッドロケット打ち上げ 国内最高高度を更新 能代市落合浜
勢い良く飛翔するハイブリッドロケット(能代市の落合浜で)
神奈川大の航空宇宙構造研究室と宇宙ロケット部は19日、能代市の落合浜でハイブリッドロケットの打ち上げ実験を行った。ロケットはごう音を響かせながら空高く飛翔し、速報値で高度10・698㌔に到達。これまでの日本記録(高度8・3㌔)を更新した。一方で、機体の分離信号は確認できず、GPS(全地球測位システム)信号の途絶や濃霧の影響で機体を回収することはできなかった。機体は2機用意していたが、設計の問題が考えられるとし、もう1機は持ち帰って分析するとした。
同研究室と同部は、平成30年10月にも落合浜でハイブリッドロケットの打ち上げ実験を実施。一昨年はエンジントラブル、昨年は新型コロナウイルス感染拡大による活動制約などで行えなかったが、困難を乗り越えて3年ぶりに打ち上げ実験を実施した。実験には東京都の下町ボブスレープロジェクトと、防衛大熱工学研究室が協力している。
今回用意した機体は「天沼丸」と「大和田丸」の2機。いずれも全長4・114㍍、外径15・5㌢、乾燥重量32・3㌔で、ハイブリッドロケット到達高度日本記録の更新や、下町ボブスレープロジェクトと共同開発した分離機構やテレメトリ・データロガー(計測モジュール)の実証などを目的としている。
また、ハイブリッドロケットの共同研究などで縁があり、先月の豪雨で甚大な被害を受けた佐賀県と広島県安芸高田市の復興支援のため、佐賀県観光PRキャラ「壺侍」と同市の公式マスコットキャラ「たかたん」のプラ板をロケットの先端部分に搭載している。
19日に使用した機体は「天沼丸」。学生たちは前日夜から準備を進め、午前6時ごろに打ち上げた。ロケットはごう音とともに空高く飛翔し、速報値で高度10・698㌔に達した。
しかし、分離信号が確認できず、GPS信号も届かなかったほか、海上、陸上ともに濃い霧が発生していたこともあって機体の捜索は困難となり、最終的に発見することはできなかった。
高度のデータは着水直前まで記録できたという。分析したところ、事前に行った弾道落下した場合のシミュレーション結果とほぼ一致しているとし、分離が失敗した可能性が高いという。
機体の設計に問題があるとみられ、もう1機をこのまま打ち上げても失ってしまう可能性があるとし、実験はこの日で終了して機体を持ち帰り、分析を行っていくという。
広報担当で神奈川大宇宙ロケット部の川口舞子さん(4年)は「日本記録を更新できたことに関してはうれしい限りだが、総合的には手放しでは喜べない結果だった。ただ、コロナ禍で経験が少ない中でも学生たちが協力して打ち上げができたことは大きく、この経験を今後に生かしていくことができれば」と話した。
実験の責任者で神奈川大工学部の高野敦教授は、高度のデータを得ることができ、日本記録を更新したことは成果だったとしながらも、「評価はぎりぎり60点。機体を回収することができず残念だった。ちゃんと分離信号がかえってきて分離してこそ工業製品であり、まだまだと言える。次の打ち上げの成功に向けて取り組んでいく」と話した。
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