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地域の理解、見守り支えに 知名町の夫婦 障がいのある弟と暮らす

牛の世話をするシュンさん(手前)=鹿児島県知名町

 「私の弟には知的障がいがある。一緒に暮らし始めて間もなく2年、弟は私たちにないものを持っていて学ぶことがたくさんある。障がいのある人、その家族は困っていることもたくさん。もっともっとみんなに障がいのことを知ってもらい、仲間づくりをしたい」。鹿児島県知名町(沖永良部島)のヨシコさん(69)=仮名=は、そう言って、弟・シュンさん(67)=仮名=のことを語り始めた。

 シュンさんは生まれた時から知的障がいがあった。小学5年生の時から島外の障がい者支援施設に入所。基本的な生活習慣や自立に向けた作業を学び、33歳で帰郷した。

 父親、叔父と一緒に暮らし、牛を飼い、バレイショやエンドウ栽培を手伝っていたが、2000(平成12)年に父親が死去。19(令和元)年の暮れに叔父が病気で倒れてからは、ヨシコさん夫婦のもとへ。現在、週3日は島内の支援施設に通い、週3日はヨシコさん夫婦の農作業を手伝う日々を送っている。

 「シュンちゃんの仕事は丁寧。鎌一本で畑の隅々まで、機械がするようにきれいに刈る」とヨシコさん。ある日、サトウキビ畑の草刈りをしている時だった。ヨシコさんは「草だけでいいよ」と声を掛けたが、シュンさんはキビのハカマ(枯葉)まで取り、ヨシコさんに「こんなにして取るんだよ」と、して見せた。

 「私は時間がないから草を取るだけでも、と思っていたが、シュンちゃんは草と一緒にハカマを取ることも体に染み付いているから、私の言うことを聞かない。確かに、ハカマまで取れば畑の風通しもいいし、キビも大きくなる」。ヨシコさんは「いいよ、シュンちゃん一緒にする」と言って、二人で作業を終わらせた。

 その年、いつもは20%ほどあるキビのトラッシュ率(キビ搬入時に混入している枯れ葉、根、土石、雑草などの不純物)が8%と減少。手取りも増え、夫婦は「弟のおかげ。弟に教えてもらった」と感謝した。

 家では家事も手伝う。洗濯物を干したりたたんだり、皿を洗ったり。夫が酔っぱらってテレビを見ながら寝ていると、夫の布団を敷いて寝床まで連れて行ってくれることも。ヨシコさんは「私たちが弟に介護されているような気がするときがある」と笑う。シュンさんが家族の一員となってから、家庭内に笑い声が増えた。

 地元老人クラブの活動にも参加。「みんなから『シュンちゃん、シュンちゃん』と呼ばれ、親しくしてもらっている。みんなに顔を覚えてもらうことで、何かあったとき助けてもらえるかと思って」とヨシコさん。自身も弟も年齢を重ねるにつれ、将来に不安はあるものの、地域の人の理解や見守りが支えとなっている。

    ◇  8月のある朝、ヨシコさん夫婦とシュンさんを訪ねた。3人の1日は牛の世話から始まる。「おはよう、モトコちゃん(牛の名前)」。シュンさんは牛にあいさつすると、牛舎の掃除を始めた。牛のふん尿をスコップで集め、運び出した後、牛の全身をタオルや手でなでて汚れを落とし、毛並みを整える。誰に指示されるでもなく、てきぱきと自身の仕事をこなしていた。

 「シュンちゃんがなでるときは牛の表情が違う。シュンちゃんの優しさが牛には分かるんだね」とヨシコさん。「人間いろいろなものの見方や考え方があるけれど、たとえ障がいあっても、それを地域の人が理解して、一緒に仲良く生き生きと暮らすことができないか。その思いは心の中にずっとある」と力を込めた。

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